ラッテン・ポテト

映画を未見の方の指針となるような感想文を適宜アップしていきます。本家を100%リスペクトしています。

スリー・ビルボード(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)

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ポテトメーター:85点

 

3月に授賞式が行われるアカデミー賞で作品賞、主演女優賞助演男優賞脚本賞、 作曲賞、編集賞の6部門7ノミネートを果たした『スリー・ビルボード』を観ました。

 

本当にスゴい映画でした。

主演のフランシス・マクドーマンド、助演のサム・ロックウェルの演技も素晴らしいんですが、何より脚本の素晴らしさに度肝を抜かれました。

 

 

この作品では主要人物がそれぞれのテーマソングを持っていて、物語において重要なメタファーになっています。

音楽に絡めたストーリーの紹介や監督の作家性については町山智浩さんのラジオでの解説(22分)が素晴らしいので、時間の許す方はぜひ鑑賞前に聴いてみてください。

 

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ここではあまり時間のない方向けに、5分で読めるネタバレなし解説を書いていきます。

 

 

ミズーリ州エビングの郊外にある3枚の立て看板」

 

『Three Billboards Outside Ebbing, Missouri』という長い原題を直訳すると、「ミズーリ州エビングの郊外にある3枚の立て看板」となります。

わざわざタイトルにまで含まれているミズーリ州。アメリカ人以外にはあまり馴染みのない州ですが、地図の赤く塗りつぶされているところにあります。

 

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私は行ったことがないんですが、たぶんクソ田舎です。

(私の母親の出身地はミズーリ州の上の上のミネソタ州で、湖しかないクソ田舎です。たぶんアメリカは10%の都会と90%のクソ田舎で構成されています)

 

ついでに2016年の大統領選の投票結果地図を見てみましょう。

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赤:トランプ勝利州、青:ヒラリー勝利州なので、赤色のミズーリ州はトランプが勝利した州ですね。

Wikipediaからの情報によると、ミズーリ州民主党共和党の二大政党が拮抗し、歴史的に「政治の行方を占う州」だとされているとのこと。ただし、2000年以降の直近5回の大統領選ではすべて保守派の共和党が勝利しています。

 

またこちらもWikipedia情報ですが、ミズーリ州は2004年に「同性結婚を否定する最初の州」になったとのこと。さらにミズーリ州の非公式の愛称は「疑い深い州(The Show Me State)」。

 

 

以上のことから、この映画の舞台となるミズーリ州については

「保守的で懐疑的、トランプを支持する貧乏白人で構成されるクソ田舎」

として理解すれば間違いないでしょう。

 

 

そんなミズーリ州の郊外に存在する3枚の古びた立て看板に、中年女性がある広告を出すところからこの物語は始まります。

 

“RAPED WHILE DYING” ー"レイプされて死んだ"

“AND STILL NO ARRESTS” -"未だ逮捕者なし"

“HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY?” "どうして?ウィロビー署長?"

 

この短い、しかし強烈な文字の踊る3枚の立て看板は、娘をレイプされて殺された中年女性の地元警察への訴えであると同時に、この映画の鍵となる3人の登場人物を表しています。

 

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娘をレイプし殺害した犯人に復讐心を燃やし、無能な地元警察に敵意をむき出しにする中年女性(フランシス・マクドーマンド

 

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立て看板で名指しで批判された警察署長。実は大きな秘密を抱えている(ウディ・ハレルソン

 

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非常に頭が悪く、キレるとすぐ暴力に走る人種差別主義者の警官(サム・ロックウェル

 

映画を観る前は中年女性が主人公で、非協力的な地元警察と戦いながら復讐に奔走する話なのかな、と思っていましたが、実はこの映画、

3人のキャラクターが皆主人公であり、観客の予想を見事に打ち破る展開になっています。

 

 

 一分先の展開が読めないストーリー

 

最近巷で話題になっている(?)1月スタートのアニメ、『ポプテピピック』をNetflixで観ました。

主要キャラのデザインだけが固定で、エピソードごとの声優もバラバラ、全く連関性のない小ネタやフェイクドキュメンタリー、歌唱シーンが1話の中で息つく間もなく続く展開される不条理アニメです。

また、本編が始まる前と終わった後には必ず全く関係のない「星色ガールドロップ」というアイドル恋愛もののアニメが流れます。

 

スリー・ビルボード』の怒涛のような、奇跡のような脚本の洗礼を浴びている間、思わず頭に浮かんだのはこのアニメでした。

 

サスペンスを見ていると思ったらコメディーになり、人情もので心が温まったと思ったら突如バイオレンスになる。また主人公が中年女性だ、と思っていたら全く違う人物の人生がクローズアップされ、このキャラクターは悪役だ、と思い込んでいたらいきなり全く違う顔を見せられ、殴られたような気持ちになります。

 

しかしそれは上述のアニメのように不条理では全くなくて、「娘を殺した犯人を究明するための立て看板」という軸から逸れることは一切ありません。

 

また登場人物がどれだけ突飛な行動を取っても、それは観客がキャラクターの表面だけを見て判断しているからそう思えるのであって(そういう風に誘導されているんですが)、彼らが二重人格なわけでも、支離滅裂なわけでもありません。

 

冒頭の町山さんの解説での言葉を借りれば、「いいお母さん」「不真面目な警察署長」「暴力的なバカ警官」というのは看板の表側でしかない。みんな「看板の裏側」は普通見ない。ですがその「裏側」はあっと驚くものなんです、という映画が『スリー・ビルボード』です。

 

「レイプ犯罪」へのメッセージ

 

あと一つ付け足せば、この映画は「レイプ」を題材に扱っているところがまた時代性があり素晴らしいですね。

 

先日のゴールデン・グローブ賞では、女優・司会者であるオプラ・ウィンフリー(アメリカの女性版タモリ)が、スピーチの中で1944年に6人の白人男性からレイプされ、犯人に一切の罰が与えられないまま98歳で亡くなった黒人女性Recy Taylorの話を引用し、名スピーチと話題になっていました。

 

www.youtube.com

 

先日、『シェイプ・オブ・ウォーター』の宣伝で来日していたギレルモ・デル・トロ監督のトークショーに行ってきたんですが、その際に監督は映画にとって決定的に重要な要素は"When"と"Where"だと話していました。

 

スリー・ビルボード』が「現代のミズーリ州」を舞台にしていることは非常に意味のあることであり、上述の「予測不能なストーリー展開」に静かな、かつ強烈な社会的メッセージを上乗せし、この映画をある種完璧なものにしているのだと思います。

 

 

以上、ネタバレなしの感想でした。素晴らしい映画です。

 

 

最後に付け足しになりますが、同じくフランシス・マクドーマンドが主演し、アカデミー賞主演女優賞を受賞した映画『ファーゴ』(1996)も併せてお薦めします。

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この映画もまたアメリカのクソ田舎(ミネソタ州)を舞台にし、ストーリーはサスペンスながらコメディー映画にも分類されることが多く、どこか『スリー・ビルビード』と似た作品。

 

監督のジョエル&イーサン兄弟は私の母親と同じミネソタ州ミネアポリスの出身で、親同士が仲良しだったそうです。

主演のフランシス・マクドーマンドは兄・ジョエルの奥さんでもあります。

一歩間違えれば私の母親が結婚していたかもしれないんですけどね。(#^.^#)

 

 

 

ということで、スリビ、みんなみてね!

キングスマン:ゴールデン・サークル(Kingsman: The Golden Circle)

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ポテトメーター:72点

 

あの『キングスマン』の続編、『キングスマン:ゴールデン・サークル』がついに公開されました!!!!!!!!!!!

本家Rotten Tomatoesでの評価がイマイチ(批評家支持52%。前作は74%)だったので、かなり期待値を下げて観に行きました。それこそ『悪霊のいけにえ』か『死霊の盆踊り』を観る心づもりで劇場に足を運びましたよ。

結果、前作ほどの衝撃はないものの、大人向けアクション娯楽大作としては相変わらず上々の出来でした。以下、前作『キングスマン』と併せてネタバレなしの感想です。

 

 

最高のスパイ、最高の悪役

 

彗星のごとく現れ、世間の注目をかっさらった前作『キングスマン』は2015年に公開されました。

監督は『キック・アス』で当時小学生の美少女クロエ・グレース・モレッツちゃんに天才殺し屋ヒット・ガールを演じさせたマシュー・ヴォーン。

 

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キック・アス』は11歳のヒット・ガールがランランラン~ランラランラン~♪のBGMに乗せて悪(成人男性50人くらい)をKILL(大量殺戮)する最高にキュートな映画です。

 

キック・アス』といえばですが、「ゼロ年代以降のボンクラ映画」を対象としたTシャツ等のグッズを製作・販売するマクラビンワークスというアツいショップがあります。ここで殺人鬼ヒット・ガールをモチーフにしたミニトートバッグを買うことができます♪(私も職場で愛用中)

ちょっとしたお出かけにもおすすめ。

mclovinworks.com

 

 

ところで『キック・アス』の監督のマシュー・ヴォーンですが、父親は有名な俳優でした。

彼の父親、ロバート・ヴォーンは、1960年代に日本でも大人気だったTVシリーズ0011ナポレオン・ソロ』でスパイのナポレオン・ソロを演じていました。

 

ちなみに・・・

0011ナポレオン・ソロ』は2015年に映画『コードネーム U.N.C.L.E.』としてリメイクされています。

 

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こちらもめちゃくちゃスタイリッシュで茶目っ気たっぷりな快作。

 

 

マシュー・ヴォーン監督に話を戻しましょう。

人気俳優を父親に持つエリート血筋の監督。

ですが、後になって父方のDNA検査を行ったところ、なんと実の父親はスパイ俳優ではなく、ジョージ6世を名付け親に持つ正真正銘の英国貴族だったことが分かったそうです。

事実判明後も仕事上でのみ「ヴォーン」姓を使用しているそう。

 

そんな現代のハリー・ポッターとも言えるマシュー・ヴォーン監督が『キック・アス』の原作者と再びタッグを組んで作った、現時点で21世紀最高のスパイ映画が!!!!!!!!

 

そうです!!!!!!キングスマンです!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

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表向きはロンドンの高級紳士服店、裏では莫大な資金を元手に世界中で活動を展開する諜報機関キングスマン」。そこにある日突然リクルートされた青年を主役に据え、007、ナポレオン・ソロを始めとする往年のスパイシリーズへの偏愛をたっぷり捧げつつ、キレッキレのアクションと音楽で誰もが楽しめる娯楽大作(※R15指定)へと昇華した傑作です。

 

英国紳士がテーマとあって、キャスト陣のイケメンっぷりも話題でした。

 

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この映画で大ブレイクしたタロン・エガートン(28)

 

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抱かれたい男1位 コリン・ファース(57)
 

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キック・アス』にも悪役で出演、渋い声が特徴のマーク・ストロング(54)

 


主役がイケメンなら悪役もイケメン超豪華です。


「人間の凶暴性を目覚めさせるSIMカード」という何ともクリエイティブな代物を世界中にばら撒くIT長者・ヴァレンタインを演じたのは、"世界で一番「マザーファッ〇ー」を連呼する俳優"としてお馴染みのサミュエル・L・ジャクソン氏。

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ヴァレンタインは環境保護活動家という設定で、「人間は地球の資源を蝕むバイキン」と考えており、「地球環境を守るには増えすぎた人口を減らせ!」という主張のもと、人間同士で殺し合いをさせるために殺人SIMカードを庶民にばら撒きます。

 


一方、現在公開中の『ゴールデン・サークル』の悪役はポピーという女性実業家。演じたのはこれまた大御所のジュリアン・ムーア氏。

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彼女は麻薬売買で莫大な富を得ながらも、合法的な商売ではないため人前に出ることができず、誰にも見つからないであろうカンボジアの奥地に帝国を築いています。

 

ポピーは自身が提供するマリファナ、コカイン、ヘロインなどのあらゆる違法ドラッグに殺人ウイルスを混入させ、解毒剤の配布と引き換えに米大統領に「全てのドラッグの合法化」と彼女が率いる組織「ゴールデン・サークル」の上場を求めます。

 

麻薬を合法化したら闇ルートが消え収入源がなくなるのでは・・・と普通は考えるでしょうが、彼女の目的は地位と名声を得て再び母国の土を踏むことなので、そんなことは問題ではないようです。

 


前作・今作に共通して言えるのは、『キングスマン』の悪役は世界規模の大量殺戮を計画するテロリストであること、そしてその動機や心情が一般人にも多少は共感しうるものであること、です。

 

今作に関しては死ぬのは違法薬物使用者だけですし、薬物中毒者とその予備軍を一掃できるという点では(道徳的には完全にアウトでも)社会的なメリットを考えると100%害悪ではないかもしれません。

 

まぁ全部フィクションですけど~( ^ω^ )

 

 

悪役に関してさらに共通している点。

それは彼/彼女が自らの手で直接人を殺すことを嫌い、身体の一部が凶器になっている改造人間を直属の部下にしているということです。

 


前作でヴァレンタインの部下を演じたのは両脚が凶器になっているソフィア・ブテラちゃん。

 

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足元のおしゃれを楽しめないのは女子的に本当にかわいそう。

 

『ゴールデン・サークル』の手下はお名前存じあげませんがイケメン俳優。こっちは片腕がサイボーグ。

 

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今までの2作はラスボス・乙武さん登場を盛り上げるための伏線にしか思えませんが、ぜひ次回作(3作目)も魅力的な悪役に期待しましょう。

 

 

エルトン・ジョンが世界を救う


キャラクターの他に 『キングスマン』の魅力といえば、キレッキレのアクションとエログロ満載のユーモア。


その点で現在公開中の『ゴールデン・サークル』においてすさまじい活躍を見せるのがカメオ出演しているイギリスの伝説的歌手、エルトン・ジョン

ナイトの勲章を持つこの大御所歌手(御年70)が今回、MVP並みの活躍。

カメオ出演って普通はワンシーンだけの出演だと思ってたんですけどね。なんか後半エルトン・ジョンだらけでしたね。訳がわからない。
 
 
ちなみに彼が過去に薬物中毒者であったこと、ゲイを公言していることを頭に入れて観るとより一層映画を楽しめるかもしれません!
 

 


 
ということで全人類必見の傑作スパイ映画『キングスマン』と絶賛公開中の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』について書いてみました。

最後に、前作を未見で今回初めて映画館に足を運ぼうという方には前作を予習しておくことを強くおすすめします。

悪霊のいけにえ(The Christmas Season Massacre)

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ポテトメーター:70点

 

お久しぶりです。じーなです。

世の流れを汲み、最近は自宅で映画を観るときはもっぱらNetflixを使っています。

それと反比例してレンタル屋さんに足を運ぶ頻度が激減している訳ですが、冬休み初日の今日、久しぶりにTSUTAYAに行きました。そしてやらかしました。

 

テキサス・チェーンソー」で有名なホラー映画の傑作悪魔のいけにえを借りたかったんです。店頭で無事在庫を確認し、意気揚々と自宅に向かいました。

今年の年末年始も順調なスタートを切ったと思われました。そう、借りたDVDの中身が『悪霊のいけにえ』だと知るまでは。

 

ホラー映画を普段からよく観るわけでもなく、『悪魔のいけにえ』のあらすじすらほとんど頭に入れていませんでしたが、この映画が『悪魔のいけにえ』ではないことは25年のシネフィル人生で培った勘が本編開始3秒で教えてくれました。「なにかがおかしい」と。

 

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↑観たかったやつ

 

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↑観たやつ

※ちなみに本編はこのパッケージの50万分の1の怖さです。

悪霊も出てきません。基本的に詐称していくスタンスのようです。

 

 

そして己の過ちへの悲哀と後悔のフェーズを抜けた後、

私はこの『悪霊のいけにえ』と最後まで向き合う決意をしたのです。

(以下若干ネタバレあり)

 

 

 

斬新なホラー

 

こういうZ級映画に対して「斬新な」といった枕詞を使うのもどうかと思いますが、まぁクリエイティブ感の塊でした。

 

主役はこの人!!

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トミー(年齢不詳)です。

 

トミーは貧しい家庭に生まれ、ボロボロの汚い服ばかり着ていたため、学校でいじめを受けていました。

ある日クラスメイトに靴を片方奪われたトミーは、「片靴のトミー」とからかわれます。両親に新しい靴をねだることもできないため、サンタクロースに「どんなものでもいいから靴を片方ください」と願い続けます。

 

そして迎えたクリスマスの朝。

必死の願いもむなしく、クリスマスツリーの下に置かれた箱に入っていたのは、靴ではなく(当時海賊の真似ごとが好きだったトミーのために両親が用意した)黒い眼帯でした。

 

ブチギレるトミー。いじめっ子達への復讐を誓い、クリスマスが来る度に元クラスメイト達を次々と殺戮していきます。

 

 

物語の背景となる以上のストーリーは、元クラスメイトの一人であるブンブン(画像右)の口から語られます。

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車中でトミーについて語るだけのシーンが10分間続く(大量の脱落者が予想される第一関門)

 

ちなみにこの後ブンブンは睾丸をむしり取られて殺されます。

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 びろ~ん(これは別の女子クラスメイトの腸を引っ張り出しているシーン)

 

 

トミーによる大量殺戮が描かれる映画ではありますが、ホラー映画に重要なカメラワーク(ホームビデオ並み)と音楽(謎の効果音)のセンスが終わっているため、全く怖くないです。これはもう奇跡の映画と言っていいでしょう。

 

 

また『13日の金曜日』をはじめとしてホラー映画の鉄板となっているお色気シーン。

その流れはこの映画も継承していますが、スイカの被りものをした男性と目隠しをした女性がサーティーワンのアイスをすくうやつを使ってプレイする場面を1分ほど流すなど、独自の変態性を展開しています。

 

 

さらに後半、あるクラスメイトが頭にドライバーを突き刺されて殺されますが、その死体の特殊メイクの出来栄えがよほどよかったと思ったのか、死体の頭をカメラがズームアップして30秒間映し続けます。この辺りでは私はもうノリノリでした。

 

 

NGシーン

 

この映画、本編は58分間しかありません。(よかった。)

そのあとのスタッフロールの途中でなぜかNGシーン集が始まるのですが、それまでに「NGそのもの」みたいな映画を1時間近く見せられているので、「台詞飛んじゃった・・・アハハ(現場一同爆笑)」みたいな、普通の映画であればクスっと笑えるNGシーンを仏頂面で見続けるしかないという苦行が最後に待っているということを先にお伝えしておきます。

 

この映画の出演者たちが一応「演技」をしているという事実が一番怖い。

 

 

 

ということで、年末年始の暇つぶしに非常にお薦めな映画です。

有限の時間の中を生きている我々にとって1時間の価値とは?人生を有意義に過ごすには?といった命題について考えるきっかけにして頂ければと思います。

 

 ちなみに悪魔のいけにえNetflixで観ることができます。

ローガン・ラッキー(Logan Lucky)

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ポテトメーター:70点

 

こんにちは。じーなです。

今日は『オーシャンズ』シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督の復帰作

ローガン・ラッキー』について少し書いてみます。

 

劇場予告で使われる文字フォントのあまりの雑さが印象深かった本作。

鑑賞前の印象通り、地味な空気感の中にも良さが光る作品でした。

 

タイトルから予測できる範囲でストーリーの要約を書くとこんな感じです。

 

「超絶アンラッキーな兄弟」が無謀な計画を実行した結果、意外と上手くいっちゃう話

 

とても教訓的な映画ですね。

 

 

これだけではあまりにもつまらないので、もう少し思うところを書いていきます。

(ネタバレなし)

特に面白くもならないのでご注意ください。

 

 

 アンラッキーな兄弟の一攫千金計画

 

この映画の主人公はチャニング・テイタムアダム・ドライバー演じる「ローガン兄弟」です。

 

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兄(左)の 顔が少し痛々しいですが、原因はカラオケのリモコンではないです。

 

兄・チャニングはかつて将来を嘱望されたフットボールのスター選手でしたが、不運な脚の怪我によりその道を断念。炭鉱労働者として働くも、隠していた脚の後遺症がバレてしまいクビを言い渡されます。

また可愛い娘が1人いますが、離婚した元奥さんに親権を奪われ、会えるのは月1回の面会日のみ。かわいそう。

 

ちなみにチャニング・テイタムは、同じソダーバーグ監督の『マジック・マイク』で男性ストリッパー役を熱演。今やアメリカでは「ホット(セクシー)な男性」の代名詞的存在です。

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 俳優として売れる前には実際にストリッパーをやっていたらしい。

 

さて一方で弟・アダムはというと、兄と対照的に地味な性格で、イラク戦争から帰国する直前に地雷で片腕を失った元軍人。明らかに使いづらそうな義手をつけてバーテンダーをしています。

 

仕事をクビになったことでお金に困った兄は、前職で得た情報をもとに、全米最大規模のカーレースが行われる会場で大金をせしめる計画を思いつきます。しかし兄弟だけでは当然メンバーが足りない。

 

そこで、美容室で働いている娼婦ルックの妹刑務所に収監されている『007』のジェームズ・ボンドなどの強力な助っ人の力を借り、淡々と計画を遂行していきます。

 

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逆に埼京線でも絶対痴漢されなそうな妹

 

各方面のプロを集めた一流犯罪集団がラスベガスの一流カジノからド派手に現金を強奪する『オーシャンズ』シリーズと比較すると、どうしても素人感、地味さが目立ちますね。

私が彼氏とソファー席でよくやる日米首脳会談ごっこ並みに地味です。

 

 

アダム・ドライバーの良さ

 

そんなに地味な映画のどこが面白いのか!?と思われるかもしれないですが、この映画の見どころとしては

・主人公兄弟のポンコツ

・007がイギリス訛りを封印しアメリカ人になりきろうとするもなりきれていない演技

ポンコツに見えて意外と緻密な計画を練る兄

・片腕ネタで120分笑いを取り続ける天然弟

・兄の元嫁役で出演しているトム・クルーズの元嫁の元気な姿

などが筆頭格として挙げられるでしょう。

 

 特に弟役のアダム・ドライバーの存在感はピカイチでした。

 

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最近では『スター・ウォーズ』や『沈黙』などの大作から『パターソン』のような小規模作品まで引っ張りだこの俳優さんです。

外見に華はないですが、片腕のない寡黙な役を演じさせるならもうこの方の右に出る俳優はいないのではないでしょうか。個人的にはストリッパーよりもこっちのほうが興奮します。

 

 

以上、アダム・ドライバーがストリッパーの兄妹に挟まれながらも頑張る映画の話でした。

ゲット・アウト(Get out)

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ポテトメーター:85%

 

初めまして。じーなと言います。

Rotten tomatoesという映画の広告宣伝でもしょっちゅう引用されるアメリカの映画批評サイトがありますが、それを堂々とパクったふざけたブログを始めてみました。

 

さて。いきなり本題です。

本家Rotten tomatoesで驚異の99%支持を叩き出した話題作が10月末に日本公開となりました。『ゲット・アウト』です。

 

最高でした。2週連続で観に行きました。

宣伝通りホラーなのでめちゃくちゃ怖いです。一緒に観に行った彼氏は途中で何度も映画館からゲットアウトしようとしていました( ^ω^)

 

宣伝文句の通り、序盤から「なにかがおかしい」を感じまくる訳ですが、後半にその「なにか」が明かされるときの絶望感!!!

 

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観る前は高級そうなソファー座ってんなぁとしか思いませんでしたが。

 

ただのホラーではない

上にめちゃくちゃ怖いと書きましたが、この映画、ただのホラーではなく「ホラーコメディー」と呼ばれるジャンルの作品です。内容的には8:2くらいの比率でホラー寄りですが、映画の趣旨そのものがアメリカ社会を風刺したブラックコメディーなので、コメディーと言い切る人がいても全く驚きません。

 

ちなみにホラーコメディー(B級以下除く)は傑作が多く、グロ耐性さえあれば『ショーン・オブ・ザ・デッド』『タッカーとデイル』『キャビン』などは必ず楽しめます。

たぶん女子会にもおすすめ。

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ベイビー・ドライバーエドガー・ライト監督作『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)

 

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 メッセージ性が高いハートウォーミング・ホラー『タッカーとデイル』(2010)

 

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オマージュの次元を超えた絶対ネタバレ厳禁の傑作『キャビン』(2012)

 

話を『ゲット・アウト』に戻します。

この映画の監督兼脚本家であるジョーダン・ピールは黒人と白人のハーフで、主に人種差別ネタで笑いを取るアメリカで人気のコメディアン・俳優だそうです。

これは映画を観た後に知ったのですが、『ビック・マウス』 という思春期の男女の性を扱ったNetflix製作の教育的エロエロアニメにも声優としてレギュラー出演されています。世にいう天才ですね。

 

この笑いの才能に長けた監督のおかげで、ホラーシーンと笑いの息抜き(この映画ではもはや「救済」に近い)がちょうどいい配分で最後まで繰り返されます。

 

映画の面白さを決定づけたラスト

特にラストシーンのインパクトはかなり大きいです。監督は元々別のラストを用意していて、昨年のトランプ大統領誕生後、別案に差し替えたそうです。

本当に英断だったと思います。めちゃくちゃ良い映画を観たときに、エンドロールに入った瞬間拍手することが稀にあるのですが、この映画の場合はラストシーンを迎えた瞬間に思わず拍手しそうになりました。久しぶりに目をキラキラさせて映画館を出ましたね。

現状を逆手に取って作られた素晴らしいラストです。まさに今、2017年に公開されるべき映画で、「時代を映す」センスの高さに思わずはっとさせられた作品でした。

 

そんな感じで、最後までゲットアウトしないで観てください。

以上、ブログを始めたくなるほど面白かった映画の話でした。